しとしとと落ちる雨垂れをぼんやりとした頭で見詰めながら、
ずっと連絡がとれないままの彼の事を思っていた。
熱に浮かされた様な時期は既に過ぎ、
逢えなくなって泣き続けた日々も既に過ぎ。
考える時間だけはたっぷりあって、
その居た堪れない時間に、心を弄ばれるだけ弄ばれて。
考えてもどうにもならなかったので、電話も通じない彼に、一通のメールを。
せめて、あなたの誕生日の時ぐらいは逢えないだろうかと。
暫くして返って来た言葉は、「イイね。久し振りに逢おう!」。


あんなに降り続いていた雨が止んだ梅雨のある日。
彼がこの世に生を受け、何度目かのこの日。
数ヶ月振りに逢う彼は、まるで何事も無かったかのように笑っていた。


ずっと逢いたくて、逢いたくて、逢いたくてしょうがなかったのに、
彼の顔を見た途端、心のどこかで終わりを感じていた。
もうこの恋は、少なくとも彼の中では終わっていて、
それを認めたがらなかったのは、戀子だけだったという事。
隣りに並び、時折触れる腕から伝わる体温は、彼の冷えた心とは裏腹にしっとりと温かく。


それがどこまでも、戀子を物悲しくさせた。
最初で最後の、一緒にお祝いする彼の誕生日。


止んでいた雨がいつの間にか降り始め、肩を濡らし、そして冷やす。
これが最後。
これで本当に最期。
1つの恋が、雨の中で死に行きました。






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