青い炎





コロコロと鳴る軽やかな鈴音に心を寄り添わせ、その冷たい銀色の体に、
随分と遠く離れてしまったあなたを重ね、 いつまでも手の平で転がしていた。


銀色が持つ冷たさには不似合いな、
丸みを帯びたハートをかたどった優しいフォルムさえも、
あの頃のわたしにはあなたと重なって仕方がなかった。
すぐに触れられる、手が届く所には見せる事はない、
触れてみない事には判らないあなたの優しさが、
冷たい銀色の優しい鈴の中に、感じずには居られなかった。


わたしの手の内にあるこの鈴とお揃いの、そう、お揃いのあの鈴の音が、
力が入り過ぎて今にも壊れてしまいそうな、あなたの心を癒してくれます様に。
どうぞ、癒してくれます様に。
そして僅かでもいいから、わたしの事を思い出してくれます様に。
どんな事でもいいから。何だっていいから。


・・耳に届くだろうか、この声は。


あれから1年以上が経った今。
日々の雑然とした色々や、そこはかと漂い在る幸せに流されてしまって、
大事なものを見失いそうになる。
そんな時、あの頃に感じた思いを忘れてしまわない様に、
あの頃と同じ様にこの鈴を、手の平で転がすのです。
変わらぬコロコロという涼やかな音は、
当時の想いとひっそりと重なり合う様にしてそこにある。


決して忘れてはならない。
今ある幸せは当然のものではなくて、
あの頃のわたしが何を云われ様とも貫き通した祈りと、
先へ進む為にと奮い出し続けた力が繋いでくれた道。
誰でもいいのではなくて、他の誰かでは駄目なんだと判ったあの日から、
心の深い場所では赤色から青色へと変わった炎が、静かに灯っているのです。


あの頃のわたしがあるから、
例え強風で炎が揺れ動く事があろうとも、消える事はないのです。
この炎を消す事が出来る人がいるとすれば、
それは間違いなくあなたでしかないのだけれど。


あなたに溺れる事無く、いつまでもあなたと溺れていたいのです。
いつだって向こうに見える、青い炎の煌きを感じながら。
静かな中に激しく燃える、そんな青い炎。
あなたにやわらかな笑顔を向けながら、情念はどこまでも深く。
そんな女でいたいのです。







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