電話





電話、大嫌いです。


高校生の頃などは、その頃の女子の大半がそうである様に、しょっちゅう電話をしておりました。
かけたり、かかって来たり。
相手は友達だったり、彼氏だったり。彼氏よりも友達の方が多かったでしょうかね。
当時、携帯は庶民のモノではありませんでしたので、家の電話でひたすら話すという状態でありました。
自分の部屋に子機を持ち込んでは、ベッドに寝転んでお喋り。長電話に怒る母を気にせずお喋り。
お茶を飲みながら、お菓子を食べながら、CDを聴きながら、時には途中で眠ったりしながら。


それが恐怖に変わったのは、楽しく電話をかけていた時と同じくして、うちにかかって来る様々な電話を受ける様になってから。


当時、方々から電話がかかって来ました。
途方も無い額になっていた、借金の取立ての電話ばかりでありました。
朝に昼に夜に。時間など、当然構わず。
穏やかに話す人もあれば、取って早々、怒鳴る人もあったりする。
怖かったけれど、怖いとは云えなかった。
親が取るよりも、先ず戀子が電話を取る。
親に替わったところで、親が何を云われるのも判っているので、
また云われてもどうにもならない状況も判っていたので、親には取らせなかった。


幾ら相手が海千山千の人であろうとも、未成年の子供相手に無茶は云いません。
それが判っているからこそ、率先して電話を取った。
「今、親は居ません」
嘘をつくのがすっかりうまくなりました。嘘をつく事が悪いだなんて、今でも戀子は云えません。
貫き通さなくてはならない時だってあるのです。


そんな電話を受ける事、数年。
すっかり落ち着いた今でも、電話のコールが聞こえると反射的にドキッとする。
電話で話す事が嫌いだと公言しているけれど、それよりも電話の鳴る音が嫌いなのです。
攻め立てる音の恐怖は、きっとずっと消えないのかも知れない。


温かい電話の記憶よりも、はっきりと突き刺さる電話の音の冷たさ。
もうあんな想いはしたくはない。







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